同人誌の作り方(6)──入稿PDFデータを作成する

前回までのブログ記事で、本の内容については一通り触れました。今回は、OpenOffice で作成した原稿を、印刷会社に入稿するための「完全データ」に変換します。

OpenOffice のデータは印刷用「完全データ」ではない

完全データとは、印刷用に最適化された「あとはRIPに通して刷るだけ」のデータを差します。ところが、印刷会社にOpenOfficeのデータを渡しても、ほとんどの会社では「これは完全データではないので、このままでは印刷できません」と答えられます。おそらくMicrosoft WORDのデータでも同じです。これには多くの理由がありますが、その1つを挙げると、OpenOffice のデータが保存される .odt 形式や、Microsoft WORD の .doc 形式では、あなたが指定したフォントの字形データが含まれていないからです。例えば、あなたが Windows 8.1MacOS X 10.9 にある「游明朝」を本文に使ったとします。.odt データには「ここには游明朝を使う」と記されているだけで、字形データそのものはまったく収録されていません。
そのようなデータを渡されても、入稿先の印刷会社が「游明朝」を必ず持っている──とは言いがたいのです。私も持っていません。印刷に関わるコンピュータシステムは、様々な事情があってとても「保守的」なのです。
その場合、印刷会社は、渡された .odt データや .doc データを「テキスト原稿」として、自前で文字組版をやり直さなくてはいけません。その費用は、当然あなたが負担することになりますが、そこまでの予算はない…ですよね?

データ入稿は「PDF」で

OpenOffice で作成したデータを入稿するには、データを「PDF」に変換することが必要です。PDF形式のデータは、その中に字形データを「埋め込みフォント」にして含むことができるので、デザイン・印刷業界で広く使われています。
私も、印刷会社に入稿するデータは、ほとんどの場合「PDF」で作成しています。

OpenOffice からPDFを作成する。

OpenOffice には「PDFとしてエクスポート」という機能がありますが、この機能は縦書きの日本語には対応していません。縦書きの日本語をPDFにエクスポートすると、下図のように文字が回転してしまいます。

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これはOpenOfficeのバグによるもので、現在の最新バージョン4.1.1でも解決していません。これでは、入稿データとして役に立ちません。

そのため、PDF作成にはOpenOffice以外のソフトや機能が必要になってきます。筆者はWindowsを持っていないので検証できませんが、Windows用にはPDF作成ソフトとして、無料で使える「Cube PDF」や、1000円台〜4000円程度で買える「JUST PDF」や「いきなりPDF」等の製品があり、これらを使う事になるでしょう。

MacOS X にあるPDF作成機能を使いましょう

Mac OS X では、OSにPDF作成機能が標準装備されているので、この機能を使ってOpenOffice から縦書きの日本語PDFデータを作成しましょう。

「ファイル」→「印刷」を選択し、左下の「PDF」から「PDFとして保存」を選択します(下図)。

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この後に表示されるファイル保存ダイアログボックスで、保存先とファイル名を指定すれば、PDFが作成されます。
この手順で作成したPDFは、縦書きの日本語がきちんと組まれています(下図)。

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フォントも埋め込まれており、印刷会社への入稿データとして利用できます(下図)。

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本文を作ったときのように、表紙・裏表紙のデザインを作成し、こちらもPDFとして保存すれば、入稿データ一式が完成します。表紙や裏表紙のデザインは、本文のような「セオリー」はほとんどありません。あなたのセンスが赴くままに、自由にデザインできます。

印刷会社に入稿するときには、以下の事を伝えましょう

このように作ったOpenOfficeによるPDFデータは、印刷用として最適化されたものではないため、印刷会社で変換をしてもらわなくてはいけません。とくにカラーは、印刷用のCMYKではなく、モニタ用の「RGB」なので、そのことを印刷会社に伝える事を忘れないで下さい。

「このPDFデータは、オフィスソフトで制作したので、CMYKのデータではありません。そちらで、色を良い具合に変換して下さい。」

──と伝えれば、印刷会社でカラー変換を行ってくれます。このカラー変換については印刷会社におまかせして下さい。印刷用に変換した場合、特にカラーの色合いが微妙に変わります(すこしくすんだ色合いになると思って下さい)。しかし、これは仕方がありません。色合いの差異については、CMYKカラーデータを作成できなかった、私たちに責任があります。

印刷会社のオペレータも、なるべく近い色合いになるように努力してくれるはずです。
また、デザインによっては「塗り足しが無い」と言われることもあります。「塗り足し」は、誌面の端まで写真や色を配置する際に必要なものです。しかし、OpenOfficeでは「塗り足し」を作る術がありません。

「塗り足しは付けられなかったので、端で少し切れても構いません」

と言うことにしましょう。

印刷会社のオペレータもベストを尽くしてくれます。彼らに任せて、印刷の仕上がりを待つ事にしましょう。

 

日本語組版の「キモ」は、6月13日の同人誌作成講座で!

さて、これで一通り、文字組版とデータ作成について、説明してきました。

このブログで述べたこと以外にも、縦書きの日本語組版では、いくつか気を付けないといけないことがあります。

その具体例については、6月13日 17:30から、福岡市中央区の「あすみん」で行うセミナー“ドウジンノススメ”でご紹介します(詳細は下のリンクからご覧ください)。皆さまのご来場を待ちしております。

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