本の作り方 2nd season (7) - 印刷会社に渡すデータを作ろう。

前回までのエントリで、本の内容(コンテンツ)については一通り触れました。おそらく、いまあなたの目の前には素敵な原稿ができあがっている事と思います。今回は、作成した原稿を印刷会社に入稿するための「完全データ」、PDF形式に変換しましょう。

完全データに変換する意味とは

完全データ? Word や Pages で作ったデータをそのまま送れば良いのでは?

それができればどんなに理想かと思いますが、世の中はそこまで便利になってはいません。様々なバージョンのWordやPagesが混在し、無数のフォントがあります。印刷会社は全てのバージョンのOS・アプリ・フォントを揃えているわけではありません。たとえば、あなたがページの最後の一行で行頭がこないように、行間や文字サイズ・余白そして文章の長さを調整していても、印刷会社が持っているWordで同じ表示がなされる保証はありません。

また、買ったばかりのPCでウキウキしながら、大枚をはたいて購入した素敵なフォント──例えば視覚デザイン研究所の「V7明朝 Medium」──を使ったとしても、印刷会社がかならずしも同じフォントを持っているとは限りません。私も持っていません。

Word や Pages で作ったデータ内部では「ここには V7明朝 Medium を指定する」と記されているだけで、フォントそのものの字形データは収録されていないのです。

他にもいくつか理由があって、Word や Pages のデータを受け付けている印刷会社は非常に少ないのが現状です。

フォントが埋めこまれたPDFデータを作りましょう

前述した問題は、長年の間デザイナーや印刷業界を悩ましてきましたが、これを解決したのが「PDF形式」です。Word や Pages での見た目通りに表示し、フォントの字形データを内蔵して、印刷会社のRIPを通ります。

RIPとは? ……などとググらなくて良いですから、さっくりデータを作ってしまいましょう。

 Wordの場合(Windows

「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSドキュメントの作成」→「PDF/XPSの作成」をクリックして選択します。(下図)

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ファイルの種類が「PDF」になっているのを確認して、保存先を選び、そして「発行」をクリックします。下図の例は、デスクトップに保存(発行)しています。

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保存先にPDFファイルが出来上がります。

念の為に、Adobe Acrobat Reader DC(無料) でPDFファイルで開き、ページや文字組の崩れや誤字がないか、そしてフォントがきちんと埋めこまれているか確認しましょう。

Acrobat Reader で「ファイル」→「プロパティ」→「フォント」の順にクリックして、下図のように、すべてのフォントが「埋め込みサブネット」になっていたら成功です。

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Pagesの場合

 「ファイル」→「書き出す」→「PDF…」を選択します。(下図)

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書き出しのダイアログで「PDF」が選択されているのを確認し、「次へ」をクリックします。(下図)

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保存先を指定して(下図の例ではデスクトップ)、「書き出す」をクリックして、PDFを書き出します。

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これでPDFが作成されるので、Adobe Acrobat Reader DC(無料)で、誤字・脱字・ページの崩れがないか確認しましょう。

また、フォントがきちんと埋めこまれているかも、確認します。「ファイル」→「プロパティ」→「フォント」の順に選択し、全てのフォントが「埋め込みサブセット」になっているのを確認できたら、完成です。(下図)

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表紙・裏表紙も作りましょう

本文を作ったときのように、表紙・裏表紙のデザインを作成し、こちらもPDFとして保存すれば、入稿データ一式が完成します。表紙や裏表紙のデザインは、本文のような「セオリー」はほとんどありません。あなたのセンスが赴くままに、自由にデザインできます。

印刷会社に入稿するときには、以下の事を伝えましょう

このように作ったPDFデータは、印刷用として最適化されたものではないため、印刷会社で変換をしてもらわなくてはいけません。とくにカラー指定方式は、印刷用のCMYKではなく、モニタ用の「RGB」なので、そのことを印刷会社に伝える事を忘れないで下さい。

「このPDFデータは、オフィスソフトで制作したので、CMYKのデータではありません。そちらで、色を良い具合に変換して下さい。」

──と伝えれば、印刷会社でカラー変換を行ってくれます。このカラー変換については印刷会社におまかせして下さい。印刷用に変換した場合、特にカラーの色合いが微妙に変わります(すこしくすんだ色合いになると思って下さい)。しかし、これは仕方がありません。色合いの差異については、CMYKカラーデータを作成できなかった、私たちに責任があります。

印刷会社のオペレータも、なるべく近い色合いになるように努力してくれるはずです。
また、デザインによっては「塗り足しが無い」と言われることもあります。「塗り足し」は、誌面の端まで写真や色を配置する際に必要なものです。しかし、Word や Pages では「塗り足し」を作る術がありません。

「塗り足しは付けられなかったので、端で少し切れても構いません」

と言うことにしましょう。

印刷会社のオペレータもベストを尽くしてくれます。彼らに任せて、印刷の仕上がりを待つ事にしましょう。

 

お疲れ様です。この連載はこれで終了です。あとは印刷会社からの発送を待ちましょう。

 

(文責:東内)