本を作りたい──そう思っているあなたの中には、すでに文章がある程度出来ていることと思います。この連載では、「手軽に、美しい同人誌を作ろう」をテーマに、同人誌作成における、基礎的なデータ作成方法を紹介していきます。
手軽とは「低予算」であること
「手軽に」といっても、その意味は様々です。いちばん手軽に本を作る方法は、私のような組版業者や印刷会社にデザインと印刷を依頼することです。
しかし、この方法には費用がかかります。原稿用紙に書かれた原稿を渡した場合は「文字入力費」が、ワープロソフトで入力した原稿データを渡した場合でも、「組版費」がかかります。その金額は、数万円から10万円を超えることもあります。
しかし、今は誰でも、パソコンで文字入力くらいはできます。
メールを書いたり、ブログや掲示板に文章を投稿したり、LINEやSMSでメッセージを伝えることは、すでに経験されていることと思います。
そして、それができるのであれば、最低限の体裁を保った本を出版することは、そう難しくないのです。
この連載が目指すもの
あなたの中にある「文学」を本にするのですから、それに相応しい見た目の本にしたいものです。
そのため、本連載は、以下の要件を満たすことを目標にします。
縦書きであること
書店で売られている小説や詩集、歌集は大半が縦書きです。
日本語に使われている漢字・ひらがな・カタカナは、本来は縦書きの為にある文字です。横書きと縦書きを比較した場合、日本語を母語する人の多くは、縦書きの文章をよりスムーズに読める傾向にあります。
あなたの中に生まれた。感状豊かな「日本の文学」を、無機質なビジネス書類のように横書きにしてはいけません。
印刷して後世に残す文学は、縦書きであるべきです。
費用がほとんどかからないこと
先述した「手軽とは低予算であること」の通り、徹底的に低予算であること──理想は0円──を前提にします。Windowsパソコンの多くには「Microsoft WORD」が搭載されています。しかし、プリインストールされていないパソコンやMacでは、WORDを1万円以上の値段で買わなくてはいけません。
文学フリマ福岡事務局では、印刷代と別に1万円以上を出費することを「手軽な」出版だとは考えないことにしました。
そのため、本連載では、無料で使用できる Apache OpenOffice というソフトを使用します(下図)。
Apache OpenOffice は、非営利団体のエンジニアによって開発されている、無料のソフトです。Windows をお使いの方も、MacOS X をお使いの方でも利用できます。
以下のURLから、日本語版の「OpenOffice」をダウンロードして、お使いのパソコンにインストールしておいて下さい。
無料総合オフィスソフトウェア - Apache OpenOffice 日本語プロジェクト
それでは、次回からは具体的なデータ作成・レイアウトのコツとツボを紹介していきます。
(文責:東内拓理)