第一回文学フリマ福岡出店申込受付開始しました

10月25日(日)開催の「第一回文学フリマ福岡」はただいま申込を受付中です。

既にご案内しておりましたように7月12日(日)が締め切りです。

まだご検討中の方は文学フリマ - 第一回文学フリマ福岡開催情報よりイベント概要をご覧の上でご検討ください。

なお、文学フリマWebカタログ+エントリーより申し込みをした情報は後から編集・修正が可能です。

ネット回線のトラブルなどで申し込みできなかった場合には救済措置を取りません。
ギリギリでの申し込みはお控えください。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。
よろしくお願いいたします!
(文責・副代表)

同人誌の作り方(6)──入稿PDFデータを作成する

前回までのブログ記事で、本の内容については一通り触れました。今回は、OpenOffice で作成した原稿を、印刷会社に入稿するための「完全データ」に変換します。

OpenOffice のデータは印刷用「完全データ」ではない

完全データとは、印刷用に最適化された「あとはRIPに通して刷るだけ」のデータを差します。ところが、印刷会社にOpenOfficeのデータを渡しても、ほとんどの会社では「これは完全データではないので、このままでは印刷できません」と答えられます。おそらくMicrosoft WORDのデータでも同じです。これには多くの理由がありますが、その1つを挙げると、OpenOffice のデータが保存される .odt 形式や、Microsoft WORD の .doc 形式では、あなたが指定したフォントの字形データが含まれていないからです。例えば、あなたが Windows 8.1MacOS X 10.9 にある「游明朝」を本文に使ったとします。.odt データには「ここには游明朝を使う」と記されているだけで、字形データそのものはまったく収録されていません。
そのようなデータを渡されても、入稿先の印刷会社が「游明朝」を必ず持っている──とは言いがたいのです。私も持っていません。印刷に関わるコンピュータシステムは、様々な事情があってとても「保守的」なのです。
その場合、印刷会社は、渡された .odt データや .doc データを「テキスト原稿」として、自前で文字組版をやり直さなくてはいけません。その費用は、当然あなたが負担することになりますが、そこまでの予算はない…ですよね?

データ入稿は「PDF」で

OpenOffice で作成したデータを入稿するには、データを「PDF」に変換することが必要です。PDF形式のデータは、その中に字形データを「埋め込みフォント」にして含むことができるので、デザイン・印刷業界で広く使われています。
私も、印刷会社に入稿するデータは、ほとんどの場合「PDF」で作成しています。

OpenOffice からPDFを作成する。

OpenOffice には「PDFとしてエクスポート」という機能がありますが、この機能は縦書きの日本語には対応していません。縦書きの日本語をPDFにエクスポートすると、下図のように文字が回転してしまいます。

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これはOpenOfficeのバグによるもので、現在の最新バージョン4.1.1でも解決していません。これでは、入稿データとして役に立ちません。

そのため、PDF作成にはOpenOffice以外のソフトや機能が必要になってきます。筆者はWindowsを持っていないので検証できませんが、Windows用にはPDF作成ソフトとして、無料で使える「Cube PDF」や、1000円台〜4000円程度で買える「JUST PDF」や「いきなりPDF」等の製品があり、これらを使う事になるでしょう。

MacOS X にあるPDF作成機能を使いましょう

Mac OS X では、OSにPDF作成機能が標準装備されているので、この機能を使ってOpenOffice から縦書きの日本語PDFデータを作成しましょう。

「ファイル」→「印刷」を選択し、左下の「PDF」から「PDFとして保存」を選択します(下図)。

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この後に表示されるファイル保存ダイアログボックスで、保存先とファイル名を指定すれば、PDFが作成されます。
この手順で作成したPDFは、縦書きの日本語がきちんと組まれています(下図)。

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フォントも埋め込まれており、印刷会社への入稿データとして利用できます(下図)。

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本文を作ったときのように、表紙・裏表紙のデザインを作成し、こちらもPDFとして保存すれば、入稿データ一式が完成します。表紙や裏表紙のデザインは、本文のような「セオリー」はほとんどありません。あなたのセンスが赴くままに、自由にデザインできます。

印刷会社に入稿するときには、以下の事を伝えましょう

このように作ったOpenOfficeによるPDFデータは、印刷用として最適化されたものではないため、印刷会社で変換をしてもらわなくてはいけません。とくにカラーは、印刷用のCMYKではなく、モニタ用の「RGB」なので、そのことを印刷会社に伝える事を忘れないで下さい。

「このPDFデータは、オフィスソフトで制作したので、CMYKのデータではありません。そちらで、色を良い具合に変換して下さい。」

──と伝えれば、印刷会社でカラー変換を行ってくれます。このカラー変換については印刷会社におまかせして下さい。印刷用に変換した場合、特にカラーの色合いが微妙に変わります(すこしくすんだ色合いになると思って下さい)。しかし、これは仕方がありません。色合いの差異については、CMYKカラーデータを作成できなかった、私たちに責任があります。

印刷会社のオペレータも、なるべく近い色合いになるように努力してくれるはずです。
また、デザインによっては「塗り足しが無い」と言われることもあります。「塗り足し」は、誌面の端まで写真や色を配置する際に必要なものです。しかし、OpenOfficeでは「塗り足し」を作る術がありません。

「塗り足しは付けられなかったので、端で少し切れても構いません」

と言うことにしましょう。

印刷会社のオペレータもベストを尽くしてくれます。彼らに任せて、印刷の仕上がりを待つ事にしましょう。

 

日本語組版の「キモ」は、6月13日の同人誌作成講座で!

さて、これで一通り、文字組版とデータ作成について、説明してきました。

このブログで述べたこと以外にも、縦書きの日本語組版では、いくつか気を付けないといけないことがあります。

その具体例については、6月13日 17:30から、福岡市中央区の「あすみん」で行うセミナー“ドウジンノススメ”でご紹介します(詳細は下のリンクからご覧ください)。皆さまのご来場を待ちしております。

atnd.org

 

同人誌製作セミナー「ドウジンノススメ」の「印刷所の使い方」編について

6/13の同人誌製作セミナー「ドウジンノススメ」で「印刷所の使い方」を担当する古賀岳です。

 

印刷所を利用した事の無い方にとって印刷所は何をどうやって利用したら良いか判らない事だらけだと思います。

実際、私も最初はそうでした。

 

今回、印刷所を利用した事の無い方向けにポイントを抑えた話をして、初めての印刷所利用へのハードルを下げたいと考えています。

 

また今回のセミナー内容でもっと聞きたい所があれば休憩時間に遠慮無く尋ねて下さい。

可能な限りお答えします。

 

それでは当日お会いしましょう!

申し込みがまだの方はこちらから!!

atnd.org

同人誌の作り方(5)──1行の文字数と行間

1行の文字数と行間を考えよう

さて、これまでで本文のサイズ・フォントを決めてきました。文字組版にはもう2つ、決めなくてはいけない要素があります。
それが、「1行の文字数」と「行間の広さ」です。

1行の文字数は15文字以上、50文字未満

これは結論の数字から述べます。縦書きの文芸誌では、1行の文字数は50文字未満にします。一行の文字数が多すぎると、読者は疲れやすくなります。かといって、少なすぎると改行を何度も繰り返すため、やはりこれも疲れます。
小説本や新書では、25字〜45文字程度に設定されていることが多く、実際、これくらいがちょうど良い文字数です。ところが、45字と50字の間には深い溝があるようで、50字になるととたんに読みづらくなります。日本エディターズスククールの「文字の組み方ルールブック」でも「縦組みでは多くても50字前後が限界、少ない場合は15文字前後までであろう」と明言されています。

一行の文字数は、ページの余白の大きさと、文字フォントのサイズによって自動的に決まります。今回の作例で「上2cm・下2.5cm」の余白をとり、本文の文字フォントを10ptにした場合は、44文字になります。(下図)

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文字数が多すぎる場合には「段組」にしましょう

余白の大きさや、文字のサイズによっては、1行が50文字以上になってしまう場合があります。例えば、本のサイズをB5、本文の文字サイズを9ptにした場合などは、確実に50文字を越えてしまいます。
こういう場合は、本文を「2段組」にすることで、1行あたりの文字数を抑えることが出来ます(下図)。

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本文が上下の2段組になっています、この設定は、OpenOfiiceの「書式」→「段組」から行うことができます(下図)。

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段組のダイアログボックスで、「列数」を「2」にすると、2段組になります。このとき、「間隔」に最低でも0.8mm以上の数値を入れておきましょう。

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作例では0.8mmを入力しています。段間が少なすぎると文字が読みにくくなりますので、最低でも本文文字サイズの2倍を入力します。9ptの文字サイズは約3.18mm、10ptは3.52mmなので、今回は0.8mmとしました。

OpenOffice での段組がお勧めできない理由

さて、文字数によっては本文を2段組にしましょうとは書きましたが、私はOpenOfficeにおける段組はあまりおすすめしません。
理由は、見出しなどに本文とは違う文字サイズを適用した際、段組の上下の行が、ズレてしまうからです(下図)。

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書籍のレイアウトでは、この行の不揃いは「格好悪い」ので嫌われます。プロが使う組版ソフト(InDesign・QuarkExpress・EDI COLORなど)ではこのようなズレを防止することができますが、OpenOfficeではスマートな解決方法がありません。
これについては「ズレを許容して諦める」か、「本のサイズをB6・A5などの小さい判型にする」のどちらかになります。本連載の最初の方で、本のサイズをA5、余白は2cm以上、本文の文字サイズを10ptとしたのは、この「段組」を回避する目的もあったのです。

行間(段落)の設定を忘れずに

文字列の行間についても、忘れずに設定しておきましょう。行間の指定は、文字サイズ・1行の文字数と同じくらい、本の読みやすさを決める重要な要素です。行が狭すぎると、読んでいる最中に視線が隣の行にズレてしまったりして、文字を目で追うのがつらくなってきます。また、誌面が窮屈で読みにくい雰囲気になってしまいます(下図)。

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行間の目安は、最低でも文字の大きさの半分以上です。
OpenOfficeでは何も指定しなくてもある程度の行間があり、これでも充分に読みやすさが確保されていますが、文芸誌の場合は、お好みでもう少し広めにしても良いでしょう。
OpenOfficeにおける行間の量は「書式」→「段落」で指定できます(下図)。

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「段落」のダイアログボックスで「インデントと行間隔」をクリックして、「行間」の項目を「比率」に変更して、110%〜150%の数値を入力します(下図)。

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数値はお好みで構いません。小説や評論などの長文では110%〜130%が良いでしょうし、行間をしっかりと空けたい詩集や歌集では、200%といった数値もあり得ます。ただし、行間を空けすぎるとページ数が増えてしまい、印刷代が高くなってしまいます。そこらへんは、見た目と予算のバランスで決定して下さい。

これで、文字組版の基本である

  • 本のサイズ(判型)
  • 余白の広さ
  • 文字サイズ
  • フォント
  • 1行の文字数
  • 行間

という、一通りの設定が完了しました。
文章では長々と感じますが、慣れてしまえば、実際の操作は10数分で完了することでしょう。
そして、ここまで設定を完了してしまえば、あとはあなたの発想の赴くままに、文章を入力していけば本の原稿はほぼ完成します。

あとは、完成した原稿を印刷会社に入稿するために、「PDF」データを書き出す作業が残っていますが、それについては次回に説明します。

同人誌の作り方(4)──書体(フォント選び)

書体を選びましょう

文字の大きさを決めたら、書体(フォント)を選びましょう。OpenOffice では、文字をドラッグして選択し、下の画像が示すところでフォントを指定することができます。

OpenOfficeで書体を変更する

本文の書体は基本的に「明朝体」を選ぶことになります。明朝体とは下の図に示すような形をしており、ゴシック体よりは楷書に近いカタチをしています。

フォント、ゴシック体と明朝体

文芸本では、この明朝体に属する書体を使う事が圧倒的に多いです。日本語の文字として読者が慣れていることと、読んでいて適度なリズム感があるので、長文の記述に向いています。ゴシック体を本文に使うのは、情報誌やカタログなど文章量が比較的少ない冊子に見られます。

パソコンに最初から入っている明朝体

Windows には昔から「MS Mincho(MS 明朝)」や「MS PMincho(MS P明朝)」がインストールされています。また、MacOS X には「Hiragino Mincho Pro(ヒラギノ明朝)」がインストールされています。新たなフォントを買う予算が無い場合は、まずこれらを使うのがよろしいかと思います。

游明朝体」も使ってみましょう

Windows 8.1以降、MacOS X 10.9以降では「游明朝体(Yu Mincho)」がプリインストールされており、こちらも明朝体の選択肢に入ります。

游明朝体は「時代小説が組めるような明朝体」をコンセプトにして、文芸単行本や文庫小説などで使われる事を目的にデザインされた、たいへん高品質の明朝体です。

もし、あなたのパソコンが Windows 8.1以降、MacOS X 10.9以降であるならば、ぜひこの「游明朝体」を使ってみて下さい。

本文に明朝体以外のフォントを使うとどうなる?

パソコンによっては様々な日本語フォントがインストールされていることも多く、とくに Microsoft Office をインストールしている方は「創英角POP」をお持ちの方も多いことでしょう。

様々なフォントがあれば使ってみたくなるものですが、本文に「明朝体」以外を使うとどうなるでしょうか。下にサンプルを表示します。

明朝体と比較して、POP体の文章は可読性に劣ります

この例ではPOP体と明朝体を比較していますが、見た目は一目瞭然です。POP体で組まれた文章は、スムーズに読めないことがお分かりになることでしょう。

もともと「POP体」とは、名前の通り、商店の店頭に置いて、商品の値札や案内板(=POP)を表示する為にデザインされています。長文の文章を読ませる為の書体ではありません。

フォント選びには「セオリー」があります

本来、フォントの選び方に「ルール」はありません。デザインする方の自由な発想に任されている部分です。しかしそれでも「セオリー」は存在し、私のように仕事で文字組版をしていても、そのセオリーから外れたことは、あまりしません。

文芸誌の本文は、まず「明朝体」を使うのがセオリーです。そのセオリーを踏まえた上で、写真のキャプションや、脚注・傍注などにゴシック体を使い、章題や大見出しにPOP体などのデザイン書体をアクセント的に使うことが望ましいのです。

フォントを購入してみましょう

本文に使われる文字フォントは、その本の「本当の顔」となる大切なものです。もし、フォントを購入するために1万数千を払っても構わないのであれば、いくつか選択肢があります。

  • 福岡のフォントメーカー・フォントワークスは、「マティスM」という本文用フォントを販売してます(店頭価格・約1万4000円前後)。クセが少なく、組んだ雰囲気がなんとなく優しい印象がある明朝体です。
  • ダイナコムウェアが販売するDynaFont TypeMuseum 3728 TrueType(店頭価格・約1万1000円前後)には「DFP 華康明朝体 W3」が収録されており、こちらも本文用として適しています。
  • 大阪のフォントメーカー・モリサワが販売する MORISAWA Font Select Pack 1(店頭価格・約1万8000円前後)は、多数のフォントから1種類を選んでインストールできます。この中にある「リュウミン R-KL」や「リュウミン L-KL」は、本文用書体として歴史が長く、パソコンで本を作る際の、デファクトスタンダードになっています。

同人誌の作り方(3)──本文を作る・文字サイズ編

同人誌を作る際に、もっとも時間がかかるのは、なんといっても本文です。本の主要な内容そのものであり、「原稿が進まない…」と誰もが苦しむものです。原稿に苦しむ人は、逃避行動として「表紙のデザインばかり何案も作る」「挿入する写真やイラストの選定を延々続ける」ということをやりがちです。しかし、そういうときは思い返して下さい。本文が出来上がらないと、本は絶対に完成しないものだという事を。

 

さて、本文というのは本の主要な内容ですから、もっとも読みやすさに配慮されていなければいけません。

文字組版において、「文章の読みやすさ」は、以下の4つの要素でだいたい決まってしまいます。

  • 文字の大きさ
  • 文字のフォント(書体)
  • 行間
  • 一行の長さ

文字の大きさを考えよう

とくに若い人が最初にやりがちなミスが、「文字が小さすぎる」というものです。小さな文字がびっしりと埋め尽くされた誌面は、緻密な雰囲気があり、本を作った人にこそ「大著を作り上げた」という喜びがあるでしょう。しかしそれは、ただのオナニーでしかありません。

デザイナーの経験則として断言しますが、8pt未満の本文には、読者がつきません。すなわち、読まれません。

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本文に使う文字は、読者の年齢層を考えて決めることなります。児童向けには大きめの文字を、10代~30代までには標準的な大きさを、40代以降には再び大きめの文字を、ということになります。40代以降は「老眼」に悩まされていますからね。

小説・評論本における標準的な文字サイズは9pt

現在の出版においては、本文は9ptが「標準的な大きさ」です。小説本や新書の多くは、9ptが基準になっています。このサイズであれば、老眼のかたでもギリギリ読める大きさです。25年前はどの出版社も8ptが基準でしたが、紙の本を読む平均年齢層の上昇に伴い、現在は9ptが標準になっています。

とはいえ、これはあくまで「小説や評論」の話です。詩集や歌集であれば、もう少し大きくても良いでしょう。

今回、作例は小説本を想定しているので、10ptにしておきます(下図)。多くの皆さんに参加してもらいたい「文学フリマ」なので、60代の方でも読みやすいように配慮しました。

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次回以降は「書体」と「行間」そして「一行の長さ」を解説します

同人誌の作り方(2)初めての「版面設計」

初めての「版面設計」──本のサイズなどを最初に決めましょう

書籍をデザインする際、最初に本のサイズを決め、次に余白の大きさを決めたりします。これを組版用語で「版面設計(はんづらせっけい)」と呼ぶことがあり、本の仕様を決める大切な工程です。

さて、OpenOfficeで「文書ドキュメント」を開いた直後は、本のサイズはA4サイズ(210×297mm)になっています。A4サイズは一般的な書類や、雑誌で使われるサイズですが、文芸の本としては大きすぎます。

また、文字の方向も横書きになっています。日本文学は縦書きが原則ですので、ページサイズと合わせて変更することにしましょう

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「書式」→「ページ」を選択すると、下のようなウィンドウが表示されます。このウィンドウで「ページ」をクリックすると、本の大きさや文字の方向を変えることができます。

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本のサイズについては多くの選択肢がありますが、文学の本に相応しいのは、A5、B5、B6 といったところです。今回は「A5(横148mm×縦210mm)」にしてみましょう。A5は文芸の同人誌ではよく使われるサイズです。

「用紙サイズ」の書式でA5を選び、文字の方向を「右から左へ(縦書き)」に変更します。

用紙の余白をとりましょう

一般的に、余白が多い(文字を印刷する範囲が狭い)と、高級感や高尚なイメージになり、文学としての静謐さが強調されます。逆に余白が少ないと、情報誌のような満載感が増し、少し賑やかで楽しいイメージになります(下図)。

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文章が主体となる文芸同人誌では、余白を広めにとるのがお勧めですが、あまり広くとりすぎると、1ページあたりの文書量が減ってしまい、ページ数が増えて印刷代が高くなります。また、寒々しい印象を持たれることもあるので、最低でも1cm以上、通常は1.5~3cm程度を目安にすると良いでしょう。今回は左右と上の余白を2cm、下を2.5cmにします。

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下を広めにするのは、そのほうが文芸本ぽく見えるからです。お手持ちの小説本などを開いて見て下さい。多くの書籍で、下の方が広めにとられていることがお分かりになると思います。

ページ番号(ノンブル)を入力しましょう

余白を設定したら、次にページ番号を設定します。ページ番号は組版用語で「ノンブル」と呼ばれます。ノンブルの役目は、目次ページから読者を誘導するだけではなく、印刷会社で印刷・製本する際に、ページが正しく並んでいるかを確認する重要な目印になります。印刷会社によっては、ノンブルが無い原稿データについて、取り扱いを断る場合もあるので、必ず入れましょう。

ノンブルは、ページの最下部に入れるのが一般的です(新潮文庫のように、ページの上部に入れる場合もあります)。

ページ番号は、最初に1度設定すれば、あとはOpenOfficeが自動的に番号を割り振ってくれます。それでは、さっそく設定しましょう。

ノンブルを表示させたい場所は「フッター」にしましょう

OpenOfficeでノンブルを設定するには、「フッター」機能を使うのが良いでしょう。

「挿入」→「フッター」→「標準」を選択します。

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すると、ページの下部に、フッターの入力領域が現れます。

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現れたフッター領域をクリックして、テキストカーソルが点滅したら「挿入」→「フィールド」→「ページ番号」を選択します(下図)。

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すると、フッターにノンブル(ページ番号)が表示されます。最初の1ページには「1」が表示されていますが、原稿を書き進めてページが増えると、これ以降、すべてのページに、ノンブルが自動的に表示されるようになります。

ノンブルを挿入した直後は、文字の大きさが12ptになっています。これでは大きすぎるので、すぐにノンブルの大きさ・フォントを設定しておきましょう。

ノンブルの文字をドラッグして選択し、フォント名を選び──文芸同人誌なら「Times New Roman」で良いでしょう──、フォントサイズは8ptにします(下図)。

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これで、ひとまず本のページの設定ができました。掲載している画像は、ページの出来上がりがイメージしやすいように、サンプルの文章をいれています。余白が適切に確保され、ページの下の中央にはノンブルが表示されています(下図)。

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さて、ここまでの作業を終えると、本の基本的な版面設計は完了です。

原稿を書き始める前の作業としては、少し儀式めいていて若干面倒くささを感じるかもしれませんが、「書籍を組む(デザインする)」場合、最初の版面設計が重要です。

余白の広さやフォントの数値は、あなたのセンスで自由に変えてもかまいません。しかし、本連載では、あえて数値を明記しています。この数値は、バランスよく見えるための1つの目安となるので、どうぞ参考にして下さい。

 

次回以降は、本文について触れていきます。